母国ブルンジ共和国と日本の「架け橋」として ーブルンジ共和国からの留学生・エマニュエル ンゴミラキザさんー

栄光通商株式会社にて

ブルンジ共和国と聞いて、どんな国かすぐに答えられる人は恐らく多くはいないでしょう。そのブルンジ共和国の通商裁判所で判事を務めるエマニュエル・ンゴミラキザさんは、2019年にABEイニシアティブ研修員として来日し、2年半、関西大学法学研究科で知的財産法を学びました。修了後、大阪にある栄光通商株式会社でインターンシップとして経験を重ねるエマニュエルさんにいろいろとお聞きしました。

3つの専門職をかけもち、多忙な毎日

——ブルンジ共和国はどのような国なのか、教えてください。

「ブルンジは東アフリカ内陸にある国で、1999年に設立され、2007年にブルンジが加盟した東アフリカ共同体(※)を構成する国の一つです。東アフリカ共同体内は国境での面倒な手続きなしに、人々の往来も物流もできます。人々はキルンジ語とフランス語、スワヒリ語を主に話し、家族の絆が強く、例えば都会に出ても一族で一緒に暮らすことも珍しくありません。あと、そうですね…鉱物資源も豊かだし、良質のコーヒー豆(オーガニックのアラビカ豆)の産地でもあります」

※東アフリカ共同体:ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、南スーダン、東アフリカ諸国により結成された共同体。2022329日には、コンゴ民主共和国の加盟が承認。

東アフリカの内陸に位置するブルンジ共和国

——ブルンジではどのようなお仕事をされていたのですか。

Lumière de Bujumbura-Burundi大学で法律を学び、卒業後はブルンジの法務省に入省しました。地方裁判所判事を経て、2012年、企業間の紛争を専門に扱う通商裁判所の裁判官に任命されました。それ以外にも、ブルンジ共和国への投資を促進するため、2015年通商裁判所内に設立された専門調査部会メンバーとしての活動や、企業や投資に関わるさまざまな問題について、法律上のアドバイスをしていました」

——それは多忙な毎日ですね。そんな中、日本留学を決めたのはなぜですか?

「仕事を進めるうちに、国外に出て、新たな視点を得たいと思うようになりました。そこで世界中の留学先を探し始めたのですが、同僚から、『あなたは裁判官で、法律のバックグラウンドがある。企業法に関わる分野でより専門性を高めてはどうか』とアドバイスをもらいました。たまたま日本のJICA(独立行政法人 国際協力機構)のウェブサイトにたどりつき、ABEイニシアティブプログラム(※)を見つけました。日本の大学で修士号が取得でき、インターンシップも経験できる。日本とブルンジのビジネスの在り方についても考えることができるこのプログラムは、私にぴったりだと感じました」  

——日本の大学の中で関西大学を選ばれたのはなぜですか。

「大学のリストをもとにあれこれ探していたところ、関西大学のウェブサイトを見た瞬間、気持ちが高まりました。というのも、関西大学は法律学校からスタートし、関西で最も歴史のある大学の一つであることや、ビジネスや企業の勉強もしっかり取り組めそうだったからです。直感的にここだ!と思いました」

関大の親切な先生や仲間たちに支えられ、知的財産法務について研究

——法学研究科では具体的に何を研究されたのですか?

「法学研究科の国際協働コースに在籍し、企業法務、について学びました。専攻した知的財産法についてはブルンジの大学でも勉強しましたが、実際に通商裁判所において知的財産関連の紛争があった時、非常に大変な思いをしたので、この分野をもっと深く学んで研究していきたいと考えました。

修士論文は”Protection of Companies as an Investment Guarantee and Strategies on Intellectual Property in Africa with Special Reference to Burundiというテーマで執筆しました。企業の投資を法律面でいかに保護するかという点において、知的財産法は非常に重要です。しかしブルンジ国内では、これまであまり研究が盛んではありませんでした。そこで、知的財産権の取得の仕方、特許庁の動き、紛争解決システムなど、日本のから学んだことをまとめました」

コロナ禍でも、さまざまなことを経験。(写真左)京都・清水寺にて(写真右)大阪・菅原天満宮での「しめ縄作り」

——関大生との交流など、勉強以外の思い出についても教えてください。

「千里山キャンパスが広すぎて、よく迷子になりました(笑)。でも、そんな時はいつも、周囲の学生が優しく道を教えてくれ、時には目的地まで連れて行ってくれました。日本の人々は常に誰かを助けられるようにスタンバイをしている、ということを関西大学で知りました。法学研究科においては、私の指導教官である山名美加先生をはじめ、先生方はみな、一方的に教えるのではなく、私が日本で何を学び、持ち帰るべきか理解してくださった上で、丁寧にご指導くださいました。関大在学中はいろいろな所に出向き、ブルンジを紹介する機会を与えてくださいました。山名先生からは『日本にはブルンジの大使館がないのだから、あなたが大使よ』と背中を押され、大使になったつもりでブルンジについて語らせていただき、多くのみなさんと交流できたことが非常にうれしかったです」

大学院学位記授与式の日の一枚。右から山名先生、エマニュエルさん、高作法学研究科長

インターンシップ先では、実際にコーヒーの輸入に挑戦

——大学院修了後の現在(20225月)は、大阪にある栄光通商株式会社でインターンをされています。インターン先ではどのような毎日を過ごされていますか?

「今の会社は、山名先生のお知り合いであるNPO法人日本アフリカ・アジアパートナーシップフォーラムの方にご紹介いただきました。社長の大谷武三郎さんは新興国との関係を大切にされていることもあって、私を快く受け入れてくださいました。

私はここで輸出入の実務について学んでいます。ブルンジは日本から自動車や自動車の部品を輸入しており、そこで何らかの紛争があれば、私が仕事をしていた通商裁判所に事案は持ち込まれます。私自身、判決を書く上で輸出入の実務の詳細について分からない部分があったのですが、今回、その実務の詳細に触れることができ、うれしく思っています。

また、今、ブルンジから日本にコーヒーを輸入する試みも始めました。コーヒーはブルンジの主要産業の一つで、ブルンジコーヒーは国際評価機関でもトップクラスの評価を得ています。年によっては、エチオピアのコーヒーよりも上にランク付けされることもあるほどです。しかし、日本に入ってきているブルンジコーヒーはまだ限られています。ブルンジコーヒーの輸出はコーヒー組合(COCOCA)が一手に担っていて、コンテナ単位だとすぐに輸出し、到着するのですが、少量のサンプルを送るとなると、なかなか上手くいきません。実は、1カ月以上前にオーダーしたサンプル品がまだ届いておらず、少量品については、輸送追跡システムもうまく機能していないことも分かりました。今回の実際の輸入業務を通して、投資環境の改善として、少量サンプルの輸送システムの改善も必要であるということを痛感しました」

栄光通商株式会社のみなさんと一緒に

タイムカードはブルンジにはない文化とのことで、毎日、押すのが楽しみだというエマニュエルさん

——帰国後はどのような活動をされるご予定ですか。

「あっという間に時間が過ぎて、あと1カ月ほどで帰国する予定です。帰国後は、通商裁判所にまずは復職し、学んだことを、ブルンジの裁判所にフィードバックする義務があると思っています。そして、同時に、外国からブルンジへの投資が促進され、ビジネスが発展するよう努力したいです。それと、機会があれば、ブルンジの子どもたちの教育の発展にも携わりたいですね。日本では、幼稚園から高校までの教育現場も訪れ、日本の子どもたちがどのような教育を受けているのか、学ぶことができました。それらをブルンジの子どもたち、教員にも伝えていきたいと思っています」

関西大学幼稚園にて。教育現場の視察はもちろん、子どもたちや教員との交流は貴重な体験! ブルンジでは教会のピアニストでもあったので、子どもたちにも曲を披露

さまざま場所で、若い世代にブルンジを紹介(中央大学付属高等学校にて)

「日本とのつながりを深め、ゆくゆくは日本企業の投資促進を担う組織も設立したいとも思っています。その前に…現在、ブルンジにも日本にも、相互の大使館がないので、日本とブルンジが直接交流できるような組織を立ち上げる必要があると思っています」

——それはエマニュエルさんだからこそできるお仕事ですね。最後に、日本留学を検討している方へのメッセージをお願いします。

「日本は留学先として魅力的な国の一つだと思います。豊かな歴史文化と先進的な技術だけではなく、人々の優しさや治安の良さもその魅力ではないでしょうか。問題と言えば、私の場合、日本語でしょうか(笑)。私は日本語が分からない状態で来日しました。しかし、振り返ってみると言葉の壁はそれほど問題ではありませんでした。大学でもインターンシップ先でも、私は多くの方に支えられ、日本語も上達しました。アフリカからもより多くの留学生が日本を目指してほしいと期待します」

日本に留学を考えている方々に向けたメッセージ! 英語、フランス語、キルンジ語(ブルンジの主要現地語)で語られています

ABEイニシアティブについて


ABEイニシアティブ(アフリカの若者のための企業人材育成イニシアティ)は、日本企業のアフリカ進出を促進するための人材育成プログラムです。関西大学でも研究生として6カ月、修士課程に2年、そして修士課程終了後、最長で6カ月のインターンシップが経験でき、最長3年間、日本で学び、経験が積めるプログラムとなっています。

現在、ABEイニシアティブ研究員として法学研究科に在籍のケーデール・モンドラーネさん(写真右)。来日前は人材育成のコンサルタントとして、母国モザンビークにあるアメリカ政府の関連団体等で活動していた

ライター紹介

青柳 直子

ライター/エディター

関西を拠点にアカデミック界隈、芸能界隈でのインタビューをメインに活動しています。舞台やコンサートなどのレポート、映画のレビューも書いています。大学の先生方や学生さんのお話を聞く度に「学び直し」させていただくのが楽しいです。